精神疾患と医師とインターネット

精神科医というお仕事■

よくよく考えると、精神科医は臨床医の中でも、ちょっと異質に思えます
全く医学を学んだこともないので、実際のところはわかりません
ですが、以前、気分障碍のことを綴りましたが、心の疾患は多くが「客観的定量的診断」に基づくものではありません

医師になる為には、まずは絶対に医学部に進学しなくてはなりません
医学部は理系の学部の代表格です

そして精神疾患以外の疾患は、比較的「客観的定量的診断」が根拠データとして存在
それに定性的表現を補足して患者へ伝える
また、治療も根拠データの変化などを経過観察しながら最適化をはかっていく
非常に理系っぽい感じがします(笑)

対して精神疾患においてはどちらかというと全てが「定性的」

これは理系的要素よりも文系的要素の方が強い気がします

そう考えると精神科医という仕事は、本当に大変な仕事だと思います

「1」と「0に1を加算」「3から2を減算する」は同じです
ですが「正しい」と「間違っていない」は同じではありません

精神科医は、その「正しい」と「間違っていない」の違いを患者から読み解き、患者へ
伝え理解してもらう仕事

本当に、自分の気持ちを自分で正しく説明出来る人がいるだろうか
しかも、どの相手に伝えても等しく理解されるような「定量的説明」を

これは非常に困難なことだと思います

ですが、その困難なものを診るのが精神科医の仕事

精神科とは、もしかすると花形であり困難とされる脳外科や心臓外科よりも、ある意味、難しい疾患を取り扱う科なのかもしれません

「心」ですもんね・・・難しいよね、やっぱり

自分自身である程度、管理というか調整して他者への配慮が可能な余白を心に作る
それが出来ているうちは「メンタル系のお医者さんも大変だよね」と思える
そういう間は医療に頼らずにいられるんですよね、皮肉な疾患です

■通院は何のために存在するのか?■

私も今までに幾度か精神疾患により通院の経験があります
その結果として、残念ながら、満足のいく医師には巡りあえていません
むしろ満足とは真逆の「不満」だらけだったりします(笑)

予約前提にもかかわらず待ち時間が長いのに反して診療時間が短い
そのような医療そのものについては、医師の能力や質だけの問題ではありません
また、診察時間の長短と、内容の満足度は別です
そこまで混在させて医師の良し悪しとは思っていません

確かに私も仕事で余裕を欠くと、話しかけてきた相手の顔も見ず、体も向けず対応してしまうことがあります

ですが、そのような対応を診察中に医師にされてしまうことが幾度もありました

精神疾患は外傷などと異なり具体的な患部が身体の部位にありません
なので触診は一切なく、患者に向き合うというのは意識しないと行えません

結局、まるで処方薬を貰いに行くだけのような通院
これを治療と呼んで良い物なのか?そんな風な気持ちになってしまいます
そして治療に対する疑心暗鬼は、さらなる心の不安定につながる

不安定な心は周囲との不調和を新たに生み出してしまう

後天的精神疾患は、自分一人だけでは発症し辛いものです
何らかの他者との関わりにより生じてしまう

他者と関わりを持たないのが心の保全に最適だと仮定します
一切の人間関係も、人の営みにより発生する情報も全てを断ち切り完全に自分一人だけで生きていく
ですが、そんな環境作りは不可能に近いです

なので、誰でも罹患する可能性がある疾患です
決して特別で特殊な疾患ではありません
そして疾患ですから、重度・重症であれば他の疾患同様に、通常の生活を送れなくなる可能性もあります

精神疾患に罹患して通院する
しかし、改善するどころか、さらなる周囲との不調和が起きる
こんな状態でズルズルと通院を続けている方は案外多いのではないかと思っています

■インターネットの功罪■

万物全て例外なく「功」と「罪」の両方が存在します

インターネットの普及は、精神疾患という事柄に対して、広い知識と情報の拡散は担えたと思います
ですが、きっと人間という生き物が未熟だからかもしれませんが、正しい拡散にはなっていない気がします

20年以上前の私の離婚の一端にもなった、うつ病の罹患
あの時、私は配偶者や血縁者から「甘え」だと言われました

土日もなく毎日終電まで働き、量的な過重労働なだけでなく、質的にも理不尽で非人道的な言動の会社という労働環境
それを吐露しても「だったら辞めたらいい」「その会社を選んだのは自分自身」「どの会社でも不満が起きないところはない」
などと批判と非難

結果、精神疾患を罹患したところ「そんなのは甘え」「自意識過剰な強い被害者意識」と言われる始末(笑)

確かに今は、このような狼藉を働く不届き者は、人格的に難がある人以外はグッと減ったことでしょう

でも、人は自身の経験以上のことは理解できません
精神疾患の罹患と一括りにしたところで、その原因や経緯は千差万別
経験者と言えども、全く同じ経験の人はいません

自分の経験は、自分以外には理解出来ない

にもかかわらず、インターネット普及によって、流される膨大な情報から座学の知識人だけは増える一方

精神疾患に対する正しい拡散と浸透までには、まだまだ時間がかかると思います
もしかすると、それは未来永劫訪れることがないかもしれません